モラルハラスメントは、ゆでガエル理論に似ているところがある。
モラハラ夫との生活を思い出して、ふと、そう思いました。
カエルをいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すけど、水に入れて徐々に水温を上げていくと危険に気が付かず逃げないでゆであがってしまう。
実際にカエルを熱湯に入れると、このような結果にはならないようですが、ゆっくりと進む危機に鈍感な例えとして、なるほどなと思いました。

モラハラ夫が最初からモラハラDVをしてくるようなら、もっと早くに逃げ出せていたのだろう。
最初から、私が話しかけただけで、
「マジねぇわ!!」
「あぁ!??」
「今俺機嫌悪いからね??」
なんて言うような人だったら、距離を置いてる。
近づきたいと思わない。
私が体調不良になると、
「いつまで寝てんだよ!!」
「いいご身分だなぁ??」
「いい加減にしろよ!!」
と怒って、体調が悪くて起き上がれない私に怒鳴る。
最初からこんな人だったら、結婚はしていなかっただろう。
結婚当初は、私が体調不良だと、
「寝てていいよ」
「ゆっくり休んだらいいよ」
って、言ってくれていたのに。
いつからこんなことになったのか。
いつから無視され、ため息をつかれ、暴言を吐かれ、目の前で物を破壊され、脅されて。
モラハラDVをされるようになったのだろう。
最初は些細な違和感だったのに。
あれ?
あれ?あれ?こんなこと言う人だった?
なんだかちょっとモヤモヤする。
今の言い方、なんだか引っかかる……。
そんな違和感が、見過ごせないくらい大きくなって、
ねぇ、言ってること変だよおかしいよって伝えても、細かいことを気にしすぎだと怒られて。
「俺を怒らせるのが悪い」が常套句。
何が何でも自分の意見を押し通そうとする。
絶対に謝らない、ありがとうも言わない。
妻は夫の身の回りの世話をするのが当然だと思っている。
どれだけ私が怒っても、自分の気持ちを冷静に伝えても、絶対に伝わらない。
妻の意見なんて、聞く必要がないと思ってるから。
常に自分が正しいと思っているから。
自分の思い通りに妻が動かないと、
「俺は傷付いた」って言う。
哀しそうにしてみせて、どうして俺の気持ちをわかってくれないんだろうって困ってみせる。
「俺の気持ちをわかってほしい」って、夫婦のコミュニケーションの時間だって言われて、モラハラ夫の主張を聞かされるだけの時間。
夫婦が仲良く暮らす為の努力を、妻がしていない、妻が自分勝手、俺はこれだけ頑張っているのにって、そんな言動をとられて混乱する。
最初は、『ダメな妻に困っている夫』という形だった。
「はやくこっちの生活に慣れてよ」って、周りに誰も知り合いがいない土地まで来た私に寄り添ってくれるわけでもなく、努力が足りないと責められる。
家事も点数をつけられて、上から目線で見下されるのが当たり前になって。
妊娠と出産で劇的に悪化した。
家事育児がまともに出来ないダメな人間扱いされて、私が母親で子ども達がきちんと育つのか本当に心配された。
無視もため息も、一度やりだしたら歯止めが利かなくなったのか、どんどんやるようになった。
目の前で物に当たり散らすのも、物を破壊するのも、一度やったらそれが当たり前になっていく。
暴言を吐くのだって、最初は冗談っぽく言っていたのがだんだん本気になっていったみたいに見える。
最初の一線を越えるまでは時間があるけど、越えたらあっという間に転がり落ちていくような感じ。
ずっと戦ってきていた。
無視をされても「無視しないでよ」って話しかけ続けたり、家の中がキレイだと機嫌よくなるかも?って思って掃除を頑張ったり、料理はモラハラ夫の好物を作ったり。
何がきっかけで怒りが爆発するか分からないから、地雷をふまないように夫の顔色をうかがって。
やっぱりおかしいって思うから、「話をしよう」って話し合いの必要性を訴えたりもしたけれど、私のようなダメな人間相手には何を言っても変わらないからという理由で却下された。
それでも自分を騙し騙し生活していた。
機嫌のいい時はハネムーン期といってモラハラがない期間も存在する。
普通の生活をすることが出来る期間もある。
私さえ我慢すれば……。
今まであれも、これも、いっぱい我慢して、かわして、笑い話にしてきた。
今度もきっと頑張れる。
そうやって、気付かないうちにどんどん水温は上昇していて、私はゆであがったカエルだ。
最初は些細な違和感だった。
それを見過ごしてはいけなかったのに。
相手を変えることは出来ないから自分が頑張ればいい。
自分の伝える力や努力が足りていなかったんだと思いこみ、結婚生活を続けてしまった。
無視をされても、頑張ってしまった。
物に当たり散らすようになってからも、離婚したいという気持ちは強まったけども実行には移せなかった。
その頃にはすっかり洗脳されていて、感覚がマヒしていて、『自分が悪い』と思い込まされていて、逃げられない。
モラハラ夫との生活は、毒を浴びるような生活だ。
気付かないうちに、じわじわと精神を蝕んでくる。
それをモラハラ夫は「気のせい」だと言ってくる。
「あれ?私がおかしいの?」
「いや、おかしいのは夫のはず……」
そんな自問自答も虚しく、自身の精神も日常もモラハラという毒に侵食されて、気付けばとんでもないところまで来てしまっていた。
DVの支援センターの方に『危険な状態です』って言われるまで、自分が危険な状態になってるなんて思ってなかった。
最初は普通のはずだったのに。
優しかったのに。
いつの間にか少しずつおかしくなって。
逃げなきゃいけないのに気付けない。
ゆでガエルと似てるなぁと思ったのでした。